特集 内因性精神病の疾病論
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
指定討論
満田 久敏
1
1大阪医大神経科
pp.19-21
発行日 1967年1月15日
Published Date 1967/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201133
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
井上教授の研究は,ただいまのお話からも明らかなように,双生児の研究が主であるが,私の場合は家系の研究が主であり,それより得られた知見の妥当性を検討するために,双生児法を利用してきた。したがつて二人の間には方法論の点では若干相違しているが,しかし共通しているのは,あくまでも臨床遺伝学の見地から問題を追究しようという立場に立っている点である。
この臨床遺伝学の性格は必ずしも明確ではないが,私はclinical geneticsを通常のmedical geneticsとかErbpathologieとは若干異なつたものと考えている。すなわち臨床遺伝学の目標は,臨床上のいろいろの問題を解明するために遺伝学を積極的に活用するという点にあつて,したがつて常に臨床より出発し,ふたたび臨床にたちかえる性格のものでなければならない。分裂病の双生児研究についてみても,ただ一致・不一致の頻度からいわゆる遺伝子の表現度を一律に算出することは,分裂病が遺伝的にhomogenousであることが確定されない限り,あまり意味がない。したがつて例えばKallmannのように,何千という甚だ尨大な双生児資料を使つていても,もし研究者が自ら各例を詳しく観察することなく,ただ各地の病院より記録を集め統計的に処理するだけでは,そこから臨床にとつて価値のある,少なくとも生きた結論を得ることができないのは当然である。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.