特集 児童精神医学の現状と将来—都立梅ケ丘病院30周年記念シンポジウムから
〔指定討論〕
村瀬 嘉代子
1
Kayoko Murase
1
1大正大学カウンセリング研究所
1The Institute of Counseling, Taisho University
pp.832-834
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203627
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I.はじめに
思春期の問題について,診断,問題の発生因とその今日的社会的特質,及び対応の仕方について小倉氏は明快に論じた。指定討論としては,こうした思春期の問題に対応する際の難しさとして,家族の役割機能として矛盾した性格を期待されていること(成長促進対憩う,甘える。家族の個性対社会性。成員間の緊密さ対適切な距離)や,思春期の人々が独立と依存との葛藤状況にあると指摘されたことを取り上げ,こうした様々の局面で,矛盾した状態にある人々に治療的に接近する際の工夫という点に焦点をしぼって若干私見を述べる。
治療的接近を考えるに際し,第1に登校拒否や家庭内暴力はあくまでも現象であって,いわゆる疾患単位ではないこと,その発生因には患者の個人的な心身両面の要因及び環境因が絡みあっていること,第二に,思春期の患者の病像は多面的で変化しやすく,力動的連続性の中で,治療的接近を通じて病態を縦断的に理解していくことが要請される。第三として,患者との出会いはその後の治療的展開のあり方に大きく影響し,いわば治療の鍵となること,しかもこの出会いは,その後の治療の流れの連続的視点にたって行われるべきことに留意したい。
次に,特徴を異にする思春期患者の出会いを幾つかあげ,治療的アプローチの基盤について述べる。
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