特集 精神療法における治癒機転
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
指定討論
前田 重治
1
1九州大学教育学部
pp.269-271
発行日 1967年4月15日
Published Date 1967/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201181
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ただいまのご発表には,とりあげたいいくつかの問題点が含まれていたように思います。なかでも,治癒機転を治療機序と区別して考えられたこと,また治癒機転を自然治癒という立場から考えようとされていたことを興味深く聞きました。演者は,臨床的に具体的に話を進められたので,私もその線にそつて二,三の質問をいたします。
(1)まず初めに,「自然治癒」というコトバについて。演者はその概念を少しひろげすぎていられるように思いました。ふつう自然治癒という場合には,自律的な健康保持機能―人間にそなわつているhomeostaticな機能によつて病気がよくなつてゆく過程と考えられています。たとえば,Schultzの自律訓練法で,患者の身体症状がよくなつてゆくのは,自然治癒的な機転を中心に考えられています。一定の練習方法によつてつくられた特有な体制(autogenic state)のもとでは,大脳皮質と間脳との相互関係が自律的に変化し,それまで障害されていた,あるいは十分に発揮されていなかつた自己調整の能力が増進するようになると考えられています。このような自然治癒に対して,一方では,医学的な治療のあとで自然になおつたようにみえる場合も含めて考えられているようです。両者は一応区別して考えていつたほうがよいのではないでしようか。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.