第5回精神医学懇話会 地域精神医学
指定討論
土居 健郎
1
1聖路加国際病院神経科
pp.823-825
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201259
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私も桑原さんのお話を承つて,問題を真正面からとりあげられた勇気と,医療中断の事実をとりあげられた着眼のよさにたいへん感心したのですが,しかしお話やまたお書きになつた報告*を読んで若干異論があります。これは討論でして,異論を唱えることが私の義務だと思いますから,まず異論から話していきたいと思います。
桑原さんのただいまのお話にはそれほど出ていないのですが,しかし報告*のなかで,「日本における地域精神医学をどこから出発するか」という問題で,桑原さんはもつぱら社会復帰という点に重点をおかれています。その点について桑原さんのGedankengangはおそらくこういうことだろうと思うのです。日本では在院患者数が非常に増え,在院日数も長い,欧米では安定剤が使われてから減少してきたにもかかわらず,日本では減少しない,むしろ上昇している。そういう事実をふまえて,いつたいこれはなぜかという問題提起をしておられます。そしてそのためには社会復帰を促進することが必要だが,それにはどうすればいいか,それは地域づくりだというのが桑原さんのお考えのように思います。もちろん社会復帰の問題をsozialな面からとりあげることは大事なことですが,しかしその点で桑原さんの考えかたに若干異論を唱えたいのです。地域精神医学というのは必ずしもリハビリテーションだけがおもなものではなくて,もう一つ広い意味でのpreventionという問題があります。
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