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編集後記
M. I.
pp.204
発行日 2010年2月15日
Published Date 2010/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101581
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本号では特集が組まれなかったので,研究論文,それも臨床的なものがずらりと並んだ。内容は多様で,偽神経症性統合失調症から病的賭博までと,古典的なものから1980年代になって登場したものまで幅広い。両者の歩みは対照的で,前者は近年ではとみに忘れ去られつつあるものであり,後者は最近になって急浮上してきているものである。また,ストレス障害もこの10年ほど急速に増えている診断名である。「PTSD,PTSD」と耳や目にしない日はない。まるで「開けゴマ」のおまじないを繰り返し聞かされているような気分にさえなる。
操作的診断基準の流布以降,伝統的診断の基盤になっていたさまざまな考え方や見方は若い精神科医の中では聞かれなくなりつつあるが,操作的な診断マニュアルからいったん離れて眺めてみることは精神医学的思考を深めるうえで欠かせないだろう。精神医学的思考とはつまるところ人間理解ということになろうが,操作的診断基準の枠の中で収まるものではないし,また生物学的知見によって説明のつくものでないことはいうまでもない。
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