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編集後記
M. I.
pp.1062
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204076
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決まり文句になってしまうが,本誌は今年の最終号になる。まずは読者諸賢に1年間の御礼を申し上げます。
近年はどの日本語医学原著雑誌もそうであるが,論文投稿が減少気味でしたがって1冊のヴォリュームも薄くなりがちである。そういう状況でも,本誌は質の維持に努めており,本号でも青少年から高齢者,生物学的研究から社会的研究,アルツハイマーから心理ストレスの検査法まで,幅広い領域における質の高い論文が掲載されていると(自画自賛して)思う。精神医学では,研究でも臨床でも,生物学的立場と心理社会的立場の他に,たとえばマクロとミクロ,疾病性と事例性,病像成因的と病像形成的,準備因子と結実因子,病態レベルと医師・患者関係レベルといったような,対言葉になった両端から見る視点が欠かせない。ちょうど本号では,展望欄に西尾雅明先生による「近未来のACT」と橋岡禎征先生らによる「精神神経疾患と活性化ミクログリアの多様性」が載っている。両者はいわばマクロとミクロという両端にある視点からの展望ということができようか。精神医学は臨床医学の中で疾患と社会との関連性が特に強い分野なので,ミクロの生物学的研究がいくら進んでも,マクロの患者と社会との関わりの視点を疎かにしてはならないだろう。ただ,マクロで広げすぎると,ミクロで突き詰めるのと同様に,「1人の生活者としての患者」の姿が見えなくなってしまうという点には注意したい(自殺の統計学的研究などではこうしたことが生じがちである)。
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