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周知のように,厚生労働省は昨年,精神疾患を医療計画に記載すべき疾患に追加し,2013年度以降の医療計画に反映させることを決めた。これにより,従来からの癌・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病の「4疾病」と救急・災害・僻地・周産期・小児の「5事業」で構成してきた地域医療の必須要素は「5疾病5事業」となった。精神疾患は患者数(08年調査)が323万人と癌の2倍に達し,現行4疾病で最も多い糖尿病の237万人をも上回っている。精神疾患が加わった背景には,職域におけるうつ病や高齢化に伴う認知症の増加などがあり,さらに年間3万人を超える自殺者の大半が何らかの精神疾患に罹っていたのではないかという推定もあって,もはや精神疾患は国民全般に無縁なものではないという現実の追認がある。ようやくという感もあるが,これに携わる我々にその用意が十分にあるかというと,心もとないというのが正直なところであろう。
精神疾患は身体疾患と違い,発生予防(一次予防)の方策がとられにくいし(ちなみに癌の“原因”を一元的にタバコのせいにする行政サイドからの魔女狩りのようなキャンペーンをみていると,身体疾患でも一次予防の道は険しいとスモーカーは考えてしまうのだが…),三次予防も社会資源がまだまだ不十分なままである。二次予防の早期発見・治療に関しては一般人への知識の啓蒙や産業医・プライマリケア医の積極的関与などにより,偏見の強かった時代に比べ雲泥の差がある。しかし,たとえば小児についてみると,ちょうど本号の「巻頭言」で山崎先生が述べておれるように,ネットワークの中核となる医療機関の整備不足,マンパワーの不足など,我々の努力が足りない部分も大きい。むろん行政の努力も足りないが,我々の中に担い手がいなかったらどうすることもできない。
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