オピニオン・医療観察法の見直しに向けて
講座担当者の立場から
林 拓二
1
1京都大学精神医学講座
pp.1052-1054
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101310
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はじめに
いわゆる「医療観察法」は,心神喪失等の状態で,殺人・強盗・放火・強姦・強制わいせつ,およびこれらの未遂と傷害にあたる行為を行った者に対し,裁判所による公正な手続きと専門施設での手厚い医療を保障するために制定されたものである。しかしながら,その法案の提出が,大阪池田小学校での児童大量殺傷事件を契機にしていることからもわかるように,ここには社会防衛的な意図があることは否めない。ただ,保安処分であるとの批判を避けるために,その目的を「病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止」と「社会復帰の促進」であるとし,通院治療と地域におけるケアの充実が謳われている。この医療観察法は,激しい反対の中で成立した経緯もあって,各方面に配慮した妥協の産物であり,残された問題も多い。そこで,5年後の見直しに向けた活発な議論が始まろうとしているのが現状である。
本稿では,講座担当者の1人として,個人的な意見を述べさせていただきたいと思う。
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