--------------------
編集後記
H. M.
pp.312
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101180
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医学生,研修医はその研修過程で多くのケースレポートを作成するが,経験とともにそつがない“紋切り型”のレポートを作れるようになる。これだけでもその人の臨床能力がある程度は把握できるが,卒前・卒後教育を長年担当してきて,精神医学のレポートには医学生あるいは研修医の人間としての感性がそこに表現されるおもしろさを感じてきた。客観的な観察者としての目に加えて,患者と向き合ったときの人間としての目がそこに読み取れるのである。経験の少ない医学生には,患者と接しているときの患者の表情,言葉遣い,態度も記述するように指導すると,なかには驚くような観察眼を発揮する学生がいる。コミュニケーションという要素なくしては多くを語れないのが精神医学の醍醐味である。少なくとも臨床精神医学は母国語とその背景にある文化なしには発展し得ないし,巻頭言での広瀬氏の指摘のように,“母国語によって発想し,議論していくことが学問の始まり”というのは精神科医の原点であり,また誇りでもある。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.