オピニオン 操作的診断基準の有用性と限界をめぐる今日的問題
認知症における操作的診断基準の有用性と限界
三好 功峰
1
1仁明会精神衛生研究所(前・京都大学)
pp.720-722
発行日 2006年7月15日
Published Date 2006/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100289
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はじめに
DSMで代表される操作的診断は,一定のシステムに基づいて,すべての精神障害にいずれかの診断名をつけるという目的を持つと言えよう。そのために,精神病像の現象面を操作的に扱うことに徹底し,精神障害の背景にある事象についての考慮は敢えて行わないという立場が貫かれている。ことに器質性精神障害のような,生物学的な基盤が明らかで疾患分類が可能な精神障害においてさえも,症状分類が採用されている。一方では,このようなやり方によって,これまで精神医学の歴史のなかで大切にされてきた精神疾患に関する概念が,少なからず切り捨てられることになったことも確かである。ただ,従来診断と比べると,診断基準が示されているだけに客観的な診断が可能となるものであり,恣意的な診断を避ける意味でも有用である。
ここでは,認知症における操作的診断基準の有用性と限界について考えてみる。
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