オピニオン 操作的診断基準の有用性と限界をめぐる今日的問題
操作的診断基準の有用性と限界をめぐる今日的課題―児童精神医学の立場から
山崎 晃資
1
1目白大学人間社会学部
pp.717-719
発行日 2006年7月15日
Published Date 2006/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100288
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児童精神医学と操作的診断基準
力動的精神医学を基盤にして発展してきた児童精神医学においては,伝統的に診断分類(グループ的接近,名称的診断)よりも診断フォーミュレーション(個人的接近,自己歴的診断)が重視されてきた。Kanner4)は,Diagnosis(診断)のギリシャ語の語源が「知識のすべて」という意味であることから,単なる疾病や状態に名称をつけることを越えて,その人についての知識を完全なものとするために,問題そのものについての認識,問題を生じた因子,問題を持つ子どもについての理解を包含したものでなくてはならないと強調した。
1980年のDSM-Ⅲの登場は衝撃的であった。多軸診断が取り入れられ,第1軸に広汎性発達障害(最初は「全般性発達障害」と訳されていた)が,第2軸に人格障害と特異的発達障害が記載され,重複診断が推奨された。しかし,わが国では第4軸(心理社会的ストレスの強さ)と第5軸(過去1年間の適応機能の最高レベル)が,それほど活用されなかった。ここでは,DSM診断を取り上げて,児童精神医学における操作的診断基準の諸問題について述べる。
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