巻頭言
都会におけるペット飼育と呼吸器疾患
吉澤 靖之
1
1東京医科歯科大学医学部呼吸器科
pp.1185
発行日 1999年12月15日
Published Date 1999/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910111
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最近はペットブームといわれ,以前は考えられなかったような珍しい動物が輸入され飼育されている.都会では狭い住宅,大動物飼育不許可のマンション,アパート,そして少人数の家族,一人住まいなどの条件から,インコを初めとする鳥の室内飼育,室内犬,猫,ハムスターやウサギなどの従順な小動物が飼育され,心の飢えを満たしている.インコなどの鳥はクラミジア・シッタシ感染によるオーム病以外に気管支喘息,慢性気管支炎,過敏性肺炎,そしてその終末像である肺線維症をきたす.少数の鳥を室内飼育すると鳥関連抗原に感作されるのに(抗体産生でみると)約2年以上かかると考えられる.しかし一度感作されると,その後は公園や神社での鳩の集団生育,庭にくる野鳥の糞などが次の発症へとつながり,個体の感受性がある場合は要注意である.また,インコの室内飼育では糞中でトリコスポロンの発育が容易となり夏型過敏性肺炎を起こすこともある.鳥飼病(鳩飼育では鳩飼病)と呼ばれる過敏性肺炎は急性型と慢性型があり,慢性型には急性症状を繰り返しているうちに症状が弱くなり労作時息切れだけをきたすタイプと当初より労作時息切れで発症するタイプがある.後者は特に特発性肺線維症(慢性型の特発性間質性肺炎)と診断されていることが多い.急性型過敏性肺炎の発症にはある程度の吸入抗原量が必要であり,防御策として吸入抗原量を減少させるという対策も考えられる.一方,気管支喘息については,小動物飼育開始後6ヵ月〜2年で感作され発症となる.飼育開始後2年以内,ハムスターでは3〜6ヵ月後に喘息を発症するか以前あった喘息の悪化をきたす.
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