Japanese
English
綜説
意識障害と気道反射
Disturbances of consciousness and airway reflexes
西野 卓
1
Takashi Nishino
1
1国立がんセンター麻酔科
1Department of Anesthesiology, National Cancer Center Hospital
pp.1176-1184
発行日 1990年12月15日
Published Date 1990/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910056
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はじめに
鼻から肺に至るいわゆる気道には有害物質の侵入を防ぐ種々な防御機構が備わっている。有害物質の気道への侵入は気道閉塞,肺の障害,有毒物質の生体内への吸収などが生じ,生命維持に重篤な悪影響を及ぼすことになる。気道反射は気道防御機構において中心的な位置を占め,その役割は有害物質の侵入を最小限に食い止めること,また侵入物を気道外に排出することによって生体に生じる侵襲を最小のものとすることにある。気道反射は末梢の受容器→中枢→効果器から成る反射弓を形成しており,これらのいずれの部分の機能低下あるいは障害は気道反射の効果の著しい低下を招くことになる。臨床的に特に問題となるのは意識障害時や麻酔時など中枢レベルでの機能低下が存在する場合であり,気道反射機能の低下が誤嚥を招き,誤嚥性肺炎などの肺合併症が発生することにしばしば遭遇する。誤嚥が予想されるような手術患者ではあらかじめ意識下に気管内挿管を行い,気道が確保された後に麻酔を導入するということも臨床ではしばしば行われる。これは意識下では気道反射が有効に働き誤嚥を防止するという臨床的経験に由来した技術である。気道反射は気道に加えられた刺激が誘因となり呼吸系および循環系に生じる多数の異なる反射の総称である。中枢抑制による気道反射の機能低下を論じる際には中枢抑制時の個々の反射の機能の変化を考慮しなければならない。本稿では意識障害と気道反射の関係を中枢レベルの機能変化と関連づけて概説し,さらに意識障害時に最も憂慮される合併症誤嚥性肺炎について述べることにする。
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