巻頭言
呼吸機能改善手術
正岡 昭
1
1名古屋市立大学医学部第2外科
pp.1175
発行日 1990年12月15日
Published Date 1990/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910055
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外科的手法による呼吸機能の改善は呼吸器外科医にとって,見果てぬ夢といってよい。肺切除術は確かに結核や癌など肺内病変の根治や鎮静に成功したが,その代償として呼吸機能の減衰を招来した。一方,呼吸器系の疾患の中には,局在性の病変のために呼吸機能の低下をきたしているものがあり,その成因をなしている局在性の病変の修復によって呼吸機能の改善をもたらしうるものがあることが明らかとなり,臨床的成果があげられるようになった。その最も顕著なものは心・血管系の病変に基づくものであって,ファロー四徴症や心房中隔欠損症,心室中隔欠損症などの先天性疾患や弁膜症などの後天性疾患があげられよう。
一方,本来の呼吸器疾患に対しても外科的手法による機能の改善がはかられるようになった。昭和50年第28回日本胸部外科学会において「機能改善を目的とした呼吸器外科」というタイトルのシンポジウムが井上権治教授(徳島大学)の司会のもとに開かれたが,これがこの領域の嚆矢となった。本シンポジウムでは気管支形成手術,巨大嚢胞症に対する手術,膿胸・血胸・水胸などに対する肺剥皮術,ロート胸など骨性胸郭変形に対する手術,肺移植,がその内容となった。この時期では,これらの手術はいずれも肺機能の改善をもたらすことが期待され,また事実臨床体験として機能の改善が評価されていたが,定量的・系統的評価に欠けるところがあった。
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