Japanese
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特集 21世紀の心不全治療の展望
日本人の慢性心不全の臨床像—現在から将来への変遷
The Clinical Features in Japanese Patients with Chronic Heart Failure
猪又 孝元
1
Takayuki Inomata
1
1北里大学医学部内科学
1Department of Internal Medicine & Cardiology, Kitasato University School of Medicine
pp.973-979
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902541
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はじめに
本邦での慢性心不全が急激に構造変化を起こしている.リウマチ性心疾患や高血圧性心疾患など根本治療や予防の比較的容易な疾患の減少とともに,虚血性心疾患や硬化性大動脈弁狭窄症,老人心といった「老人病」としての疾患群の増加が著しい.これはいわゆる高齢化社会の急速な到来がもたらした産物ともいえよう.信頼すべきコホート研究の代表であるFramingham研究1)においても,慢性心不全患者は75歳以上の高齢者から多発しており,年齢分布の累積的増加の傾向からも心不全は急性疾患から慢性疾患へその「すがた」を変貌させつつある.
前負荷・後負荷・心収縮性という心機能を規定する3要因の是正を中心に理論展開を図った古典的心不全治療の概念は,まさに急性心不全に基づく治療体系の構築であった.しかし,1990年代に盛んに行われた大規模臨床試験は,この3要因の是正に向けられたはずの強心薬や血管拡張薬の一部で生命予後の改善どころか悪化さえももたらす結果をはじきだした.すなわち,神経体液性因子の病態関与への重要性や,禁忌とされていたβ遮断薬の有用性をはじめとして,「慢性心不全」を独立した疾患概念として認識する必要性が生じたわけである.
慢性心不全診療の未来を語るには,まず過去を振り返ることが必要である.そして,その変革の流れの道筋を辿ることにより,われわれが進むべき将来的な方向性が示唆されるものと思われる.
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