Japanese
English
特集 セロトニンと循環器疾患
セロトニンと肺高血圧
Involvement of Serotonin for the Pathogenesis of Pulmonary Hypertension
坂巻 文雄
1
,
中西 宣文
1
Fumio Sakamaki
1
,
Norifumi Nakanishi
1
1国立循環器病センター内科心臓血管(肺循環)部門
1Division of Cardiology and Pulmonary Circulation, Department of Medicine, National Cardiovascular Center
pp.569-575
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902482
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はじめに
原発性肺高血圧症(primary pulmonary hyper—tension:以下PPH)や慢性肺血栓塞栓症は原因不明の肺血管抵抗の上昇から右心不全にいたる予後不良の疾患で,その病態の解明と有効な治療法の開発が待たれる難病の一つである.PPHに代表される重症の肺高血圧の成因として肺血管内皮傷害による肺血管収縮および血管平滑筋の増殖,凝固線溶異常による微小血栓の3つが重要と考えられる1).これら3つの因子は必ずしも独立したものではなく,肺細小動脈の内皮傷害に基づき互いに相互作用を及ぼしながら進行していくと考えられている(図1).肺循環の調節には交感神経および副交感神経刺激に加え,プロスタグランディン・ロイコトリエン・ヒスタミン・サブスタンスP・エンドセリン・一酸化窒素およびセロトニンなどの種々の体液性血管作動性物質が関与する2).
セロトニンは血栓形成過程に重要な役割をもつ血小板に主に蓄えられること,代謝部位が肝ならびに肺であること,およびその血管収縮ならびに細胞増殖促進作用から肺高血圧の発症および増悪因子になり得ると推定される.実際これまでに多くの基礎的研究を中心に肺高血圧とセロトニンに関する知見が蓄積されている.
本稿では,はじめにセロトニンの作用・代謝の概略について,特に肺との関連を中心に述べる.次にセロトニンが肺高血圧をはじめとする種々の肺循環障害に及ぼす影響について,これまでの基礎的および臨床的研究をセロトニン拮抗薬による治療の可能性も含めレビューする.最後に,近年話題になっているセロトニントランスポーターについて触れたいと思う.
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