検査ファイル
肺サーファクタント
小林 龍一郎
1
1済生会中央病院内科
pp.74
発行日 1995年1月1日
Published Date 1995/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902227
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肺サーファクタントは肺胞Ⅱ型上皮細胞から分泌され,その主な機能は肺の表面張力を低下させ,呼吸運動に伴う呼吸筋の仕事量を軽減することと,肺胞の虚脱を防止することである.サーファクタントは肺胞Ⅱ型上皮細胞内で産生され層状体内に貯蔵されている.必要に応じて層状体から肺胞内に分泌され,肺胞表面を被覆して機能している.
肺サーファクタントはリン脂質と蛋白の複合体を主体とした液体である.脂質のほとんどがリン脂質で,ほかに中性脂肪,コレステロールなどが含まれている.リン脂質のうちサーファクタントとして機能するのは主としてdipalmitoylphosphatidylcholine(DPPC)である(表).蛋白成分は約4%である.蛋白はリン脂質と結合して重要な働きをするので,サーファクタントアポ蛋白(SP)と呼ばれている.アポ蛋白には親水性のSP-AとSP-D,疎水性のSP-BとSP-Cの4種類がある.SP-CとSP-Dがサーファクタントの吸着に関係していて肺表面張力を低下させる機能にかかわっているとされている.SP-AはⅡ型細胞からのサーファクタント分泌の抑制と取り込みの促進(サーファクタントのリサイクル),肺胞マクロファージの貪食促進作用などがある.SP-Dの生体防御機能に関与するとされているがまだ十分理解されていない.
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