巻頭言
論文の「著作権」について
諏訪 邦夫
1
1帝京大学医学部麻酔科
pp.443
発行日 2002年5月15日
Published Date 2002/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902464
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米国の雑誌を中心に,一般に国際的に名前のある,“Impact Factorの高い”雑誌に論文を投稿すると,どこかの時点で「著作権を出版社に委譲する」ようにという「命令」がきてサインします.投稿規定にすでにそう明記してある場合も少なくありません.仲間の意見をきいてみると,「あまり良い気持ちはしないが,そういうものらしいのでサインしている」ということのようです.私自身もやはり同じように感じます.最近では自分で論文を書くことは少ないのですが.このようになった経緯や論理は知りませんが,よく考えてみると不思議なことではないでしょうか.「著作権」というのは「著者固有の権利」であって,無闇に他人に譲り渡すべきものではありません.
日本の著作権法では,著作権は著者の死後50年間存続します.たとえば65歳の私の著作でも,最低で今後50年つまり2050年まで保護されます.インターネットに「青空文庫」(http://www.aozora.gr.jp/)という組織があって,そこには著作権の切れた作品がボランティアの方々によって大量に入力されて掲示されており,無料でダウンロードできます.夏目漱石も森?外も,著作権はとうの昔に切れていて,その主要作品はほとんどすべて掲示されています.1948年に亡くなった太宰治の場合,つい最近になって著作権が切れると同時に大量の作品が一斉に掲示されて,この作家の人気を改めて認識しました.
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