Japanese
English
綜説
睡眠調節の分子機構
Molecular Mechanisms in Sleep Regulation
乾 隆
1
,
裏出 良博
2
Takashi Inui
1
,
Yoshihiro Urade
2
1科学技術振興事業団・CREST
2(財)大阪バイオサイエンス研究所・分子行動生物学部門
1“Understanding the Brain”Core Research for Evolutional Science and Technology (CREST),Japan Science and Technology Corporation (JST)
2Osaka Bioscience Institute, Department of Molecular Behavioral Biology
pp.587-593
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902106
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はじめに
われわれは,睡眠覚醒のサイクルを繰り返し,人生の3分の1を眠って過ごす.睡眠不足が続くと判断力や集中力が低下する.さらに,免疫力を高める様々なホルモンが睡眠中に分泌されるため,睡眠不足の慢性化は皮膚の艶を失い,風邪などの疾病の罹患率を上げる.このように睡眠がわれわれの健康の維持に大切であることは疑いようのない事実である.
24時間社会といわれる現代社会においては,様々なストレスや夜間就労および交代勤務などの増加により,不眠症,リズム障害,睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害を持つ人口が急増し,社会的な問題となっている.しかし,「眠気はどうして起きるのか」,「夢はどうして見るのか」,「あるいはどうして目覚めるのか」,という素朴な疑問に対する明確な解答はない.なぜなら睡眠の調節機構に関する科学的な研究が行われはじめたのは比較的最近のことであり,現在でも,睡眠は「科学の中の謎である」といっても過言ではないからである.
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