Japanese
English
特集 特殊な環境における呼吸と循環
高圧環境における呼吸と循環
Respiratory and Circulatory Functions in Hyperbaric Enviromnent
筒井 由香
1
,
白木 啓三
1
,
山内 克哉
1
Yuka Tsutsui
1
,
Keizo Shiraki
1
,
Katsuya Yamauchi
1
1産業医科大学第二生理学
1Second Department of Environmental Physiology, School of Medicine, University of Occupational and Environmental Health
pp.441-446
発行日 2000年5月15日
Published Date 2000/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902085
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はじめに
高圧環境下における生理学の研究は,主にDiving Physiologyとして発展してきた.周囲を海に囲まれた日本では,高気圧環境との関わり合いはアマ(海女,海士)の歴史とともにあるといえる.近年の科学技術の進歩により,海中のみならず,地上でも高圧酸素治療や土木高気圧作業としてヒトが高圧環境にさらされる必要性も生じてきたが,これらもDiving Physiologyの基礎のうえで応用されている.最近では特殊ガス混合空気による飽和潜水法が開発され,ヒトに加わる圧力および曝露時間を飛躍的に増大させることを可能にした.このような高圧環境では少し以前までの教科書的な知識では説明のつかないような生理学的な反応をみることができる.現在のところヒトが耐えうる最高深度は600〜700m程度までである(現在までの最高到達深度は686m,69.6気圧).このような環境では,空間的な制限から発生するヒトの生理学的および心理学的な変化も無視することができないが,圧力そのものが器官レベルで生体の機能に変化をもたらし,さらには細胞の代謝機能にも影響を与える事実が観察されている.
本稿では,Diving Physiologyとして発展してきた高圧環境におけるヒトの生理学的な反応について,呼吸と循環に焦点をあてて概説する.高圧環境での生体の生理を理解するうえで基本的かつ重要な物理的法則を表1にまとめた.
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