特集 特殊な環境における呼吸と循環
Head-out Water Immersion
須藤 正道
1
Masamichi Sudoh
1
1東京慈恵会医科大学宇宙航空医学研究室
1Division of Aerospace Medicine, Department of Physiology (II), The Jikei University School of Medicine
pp.447-451
発行日 2000年5月15日
Published Date 2000/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902086
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はじめに
“Head-out water immersion”,聞き慣れない言葉だが,1975年頃から無重量状態のシミュレーションとして腎機能や循環器機能の変化を観察する目的で用いられている1).日本語では水浸法と訳される.Head-out water immersionとは頭部を水面上に出し,頸部から下を水に浸すもので,水圧の影響により体液を下肢から頭部方向へ移動させるものである.この変化は宇宙空間における無重量状態での体液移動と似ているために,無重量の模擬実験としてこのhead-outwater immersionが用いられる.また,水中に体があるので浮力により体重負荷の軽減ももたらされる.以前には体全てを水浸してしまうtotalbody water imrnersionも行われていたが,水中で呼吸するための呼吸装置など大がかりな装置が必要となるのであまり行われていない.しかし,宇宙遊泳の模擬として宇宙服を着て水中に入り,浮力により模擬無重量感覚が体験でき,作業訓練などには大型プールによるこの方法が用いられている.ロシアでは水が直接体に触れないようにしたdry water immersionという水浸法が用いられている.最近では水浸法に代わり体液が水浸法同様に頭部方向にシフトする,ベッドの頭部方向を6°下げて臥床する6°head-down bed restという方法も用いられている.ここでは水浸法にについて述べる.
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