低圧低酸素環境における呼吸と循環

Hypobaric Hypoxia

　はじめに

　低圧低酸素環境における呼吸と循環の変化，さらに順応・適応現象について，大きく体循環系と肺循環系に分け最近の知見を解説したい．一般に順応現象とは，生物が有する機能および形態が環境の変化に応じて変化し，その環境での生存に適合することを意味する．数時間から数週間の時間的経過をとり，可逆的，非遺伝的変化である．一方，適応現象とは，機能的，形態的変化がその環境のもとでの繁殖に適合すること，あるいはその適合する過程を意味し，不可逆的，遺伝的変化である．低圧低酸素環境では，臓器，組織，細胞，ミトコンドリア，解糖系・TCAサイクルと電子伝達系の各酵素群など，広い範囲で異常環境に対する順応・適応が生じる．

　本稿では，このなかでも特に急性・慢性の低圧低酸素環境に対し，ヒトを含めた哺乳動物が，如何なる体循環・肺循環系の変化によって組織酸素加tissue oxygenationを維持しようと反応するのか，さらには順応・適応するかに論点を絞る．