臨時増刊特集 日常役立つ診療技術
治療篇
8.高圧酸素療法
古田 昭一
1
1三井記念病院胸部外科
pp.2009-2016
発行日 1976年12月5日
Published Date 1976/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206944
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大気圧よりも高い気圧環境のなかに患者を収容し,高濃度の酸素を投与することにより症状の改善をはかろうとする治療法を高圧酸素療法と定義することができる.高圧医学の発達の歴史は新しいものではなく,1662年,イギリスの生理学者Henshawは肺疾患の治療を目的として高圧室を作り,急性例は高圧で,慢性例は低圧で治療した.1830年代になり,フランス人によってle bain d′ air cornprimé(圧縮空気浴)と称する治療法が流行し,多くの臨床例が報告された.1878年,Paul Bertにより高圧生理学の基礎が完成され,また彼は神経系に対して高圧酸素が毒性をもつことを実証した.
高圧酸素を治療として用いたのは,1887年,Valenzvelaにより肺炎に使用されたのが最初であるとされている.1895年,Haldaneは高圧酸素がCO中毒を防止することを実験的に証明した.しかし,これらの適用が理論的な根拠を欠いたために,流行は廃れ,さらには酸素中毒に関する生理学的,薬理学的な研究が進むに従い,高圧酸素を治療に応用しようという機運は生まれない状況のまま約50年を経過した.
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