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■先天性心疾患をめぐる最近1年間の話題
心奇形のカテーテル治療は,未だに試験的なものと治療手段として定着したものとに分けられてきた.そのなかで半月弁狭窄と大動脈縮窄では一治療法として定着し,それらの長期予後についての総説が出された1).概して効果は良好であるが,弁については閉鎖不全,縮窄症では動脈瘤の問題,それにカテーテル挿入に伴う血管損傷の問題が残っている,と述べられた.肺動脈弁狭窄では術後の経過も極めて良いので今や第一選択と考えている.一方,先天性心疾患の比較的新しい話題として,胎児心臓病学,成人先天性心疾患,そして心臓大血管奇形の分子生物学的手法による原因の解明が挙げられる.
先天性心疾患の生産児での発生頻度は,わが国では約1%であるが,胎児期診断の場合その数倍以上になることが知られているので,かなりの部分が胎児死亡となっていることが分かる.欧州では心疾患の胎児期診断が盛んで,その結果,胎内自然歴が判明するとともに,人工中絶も増えている.イタリアからの報告2)では,847例の胎児診断例のうち29%が人工中絶となった.その半数は染色体異常を含む全身疾患との合併,30%は重症複合心奇形であった.妊娠継続の12%が胎児死亡,43%が出生後に死亡した.最終的に生存は全体の32%のみであった.このデータは胎児期診断心疾患の予後の悪さをも示している.イギリスからの報告3)では,胎児診断例の約半数は人工中絶を選択し,胎児心疾患スクリーニングがもっと普及したら,更に5%程度の例で中絶されるであろうと推測している.わが国においては,産科診療のルーチンとして胎児エコー検査が行われ,そのなかで偶然に心奇形が発見される例が胎児診断例の大多数である.それらは,診断時期が遅いこともあって,多くの倫理的問題を含んでいる.人工中絶に関しては英国などとは宗教観や生命観,法律が異なるため比較すべきデータはないが,胎児診断例の予後の悪さは同様である.
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