Japanese
English
綜説
冠攣縮の遺伝的背景
Genetic Background of Coronary Artery Spasm
吉村 道博
1
,
泰江 弘文
1
Michihiro Yoshimura
1
,
Hirofumi Yasue
1
1熊本大学医学部循環器内科
1Department of Cardiology, Kumamoto University School of Medicine
pp.595-599
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901913
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はじめに
狭心症は一過性の心筋血流不足が原因となり特有の症状を有する臨床症候群である.よって狭心症の発症機序にはその病態の違いによりさまざまな原因があると思われる.
日本人の狭心症には一つの特徴がある.それは冠動脈の攣縮(冠攣縮)が多いことである.冠攣縮は異型狭心症のみならず,その他の狭心症や急性心筋梗塞など虚血性心疾患全般の発生機序に重要な役割を果たしている1,2).
冠攣縮の発症にかかわる重要な環境因子は喫煙であることが既に報告されているが3,4),冠攣縮の詳細な発症機序,あるいはその危険因子についてはまだ不明な点が多い.以前より,冠攣縮の発症頻度には人種差が存在することより,遺伝的要因の存在が想定されていたが,その同定には至っていなかった.
最近われわれは,冠攣縮の発症機序に血管内皮機能障害が関与していることを報告し5,6),さらに内皮で一酸化窒素(NO)を作り出す血管内皮型NO合成酵素(eNOS)遺伝子に変異が存在することを初めて明らかにした7).本稿では,冠攣縮の病態を簡単に紹介し,eNOS遺伝子変異の発見の経緯とその意義について記す.
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