巻頭言
脳死移植で語られない側面
島田 和幸
1
1自治医科大学循環器内科
pp.543
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901905
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長い間の混乱を経て,脳死患者の臓器移植が我が国でも本格的に開始されようとしている.この新しい医療技術は同種移植であり,同胞の「死」を前提としているために,日本人の生死観をまともに問うことになった.「死の定義」をめぐって,国民的な議論が交わされた.それに要した時間は諸外国に比し,余りに長かった.到達した結論は,しかし本質的に諸外国と変わるものではなく,脳死を法律的な死と認めようという臓器移植容認論である.
臓器移植を求めて外国に脱出する現状に多くの人がそれでよいのかと疑問を持ったことも我が国に特有な現象かもしれない.臓器移植が我が国でできるようになって,国外に脱出する必要がなくなったということ以外に,今回の臓器移植再開によって何か日本人の精神や生死観に新たな展開が生まれたのであろうか.
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