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睡眠呼吸障害の治療をめぐる最近1年間の話題
睡眠呼吸障害の治療に関しては,その頻度の高さから閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が主役となる.OSASの治療は,減量やnasal CPAPなどの保存的治療とUPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)を中心とした外科的療法に大別されるが,近年,口腔内装具(oral appliance:OA)が開発され,特に軽—中等症例に有効性が報告されている.しかし,何といっても昨年1年間の最大の話題はnasal CPAP治療の有効性に関する論議1)であろう.nasal CPAPは,これまでOSAS治療の革命的治療法として欧米を中心に行われ,OSAS治療の第一選択の地位を不動のものとしてきた.遅ればせながら,わが国でも,ようやく昨年,健康保険の適応が認められたばかりである.1997年にBMJに掲載されたWrightら1)の論文は,これまでに報告されたnasal CPAPの有効性に関する全ての研究を検証し,その有効性が必ずしも確立されたものではないことを示唆した.彼らは,これまでCPAPの有効性を示した研究のほとんどがrandomized control studyではないとして退け,placeboを用いた厳密なstudyはわずか1個しかないとし,これでは到底,有効性を云々できるものではないとした.この公衆衛生医からだされたCPAP治療の有効性に対する疑問は,多くの臨床医に衝撃を与え,波紋を拡げたかのようである.詳細は後述するが,昨年のThorax誌上で,臨床医側からの反論が掲載され,激しいdebate2〜5)が展開されている.著者も,これまで実際に多くのOSAS患者を治療し,その効果を実感してきた立場から,CPAP治療の有効性を否定する側には到底組みせないが,冷静に検査結果を吟味し,その有効性を検証する彼らの言に耳を傾ける必要はあるのではないかと考えている.
まずDouglas2)は臨床側の代表としてWright1)の論文に反駁している.すなわち,彼らの検証には臨床医が全く関与していないことを挙げ,次に研究の方法論(厳密なcontrol studyがなければ評価に値しない)だけに終始し,nasal CPAPにより臨床症状が明らかに改善しても,それを改善と認めず,ひいてはCPAPの有効1生を否定するのは間違いであるとしている.また,controlstudyも過去に1個だけではなく5論文あり,特に1998年のEnglemanら6)の研究は,少人数ではあるが厳密なcontrol study (CPAP vsplacebo錠)が行われており,日中の傾眠と精神神経機能はCPAP治療群で明らかな改善が認められているとしている.したがって,日中の傾眠や精神機能に対するCPAPの有効性は疑いがなく,OSAS患者の多くが,この臨床症状に悩まされている現状では,CPAPの有用性に疑問の余地はないとしている.
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