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睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS1))は,睡眠中に繰り返し出現する無呼吸により,種々の病的症状を呈する疾患であるが,なかでも,睡眠中にしばしば出現する中途覚醒は深睡眠を妨げ,結果的に著しい日中の傾眠をもたらす.図1に健常者と閉塞型SAS(OSAS)患者の睡眠構築を示すが,OSAS患者には,ほとんどnon-REM睡眠3-4期(S3—S4)(Slow Wave:SW),すなわち深睡眠が認められず,中途覚醒(Wake)が頻発している.このため,多くのOSAS患者は病的な日中傾眠に悩まされ,時には失職,左遷など社会生活を脅かされている場合もある.また,米国の報告2)によれば,アラスカ沖の原油流出事故や原発事故の原因として,操作中のオペレーターの居眠りが指摘されており,傾眠が及ぼす社会への障害の危険性が警告されている.同様な危険性は,自動車運動時においても当然考えられるが,その研究が最初に報告されたのは1987年であり,Geogeら3)が,カナダにおいてOSAS患者が引き起こす交通事故が健常者の2倍以上であることをLancetに報告した.続いて1988年,米国のFindleyら4)が詳細な検討を行い,OSAS患者は一般のドライバーの約3倍,無呼吸のない健常コントロールの約7倍も交通事故の頻度が高いことが明らかにされた(図2).さらに彼らは,OSASの重症度が増大するほど交通事故の頻度が高くなることを示し5)(図3),OSASと交通事故との明らかな関連性を示唆した.Narcolepsy患者と交通事故との関連については既に報告されていたが,Narcolepsy自体の患者数はそう多くないため,必ずしも注目はされなかったが,OSASの頻度はNarcolepsyなどとは比較にならないほど高い6)ため,社会的にも大きな注目を集めた.特に高速道路が発達していて高速運転が主体の北米においては,運転中の居眠りや注意力の欠如は致命的な事故を招きかねず,またドライバー本人だけでなく,他者をも巻き込む危険性があり,社会的にも大きな問題となった.
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