Japanese
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綜説
呼吸のリズム形成—摘出脳幹—脊髄標本を用いた研究
Respiratory Rhythm Generation:Studies using isolated braillstem-spinal cord preparations
鬼丸 洋
1
,
荒田 晶子
2
,
本間 生夫
1
Hiroshi Onimnaru
1
,
Akiko Arata
2
,
Ikuo Homma
1
1昭和大学医学部第二生理
2東京都神経科学総合研究所病態神経生理学部門
1Department of Physiology, Showa University School of Medicine
2Departnnemt of Neurobiology, Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience
pp.773-782
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901741
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はじめに
哺乳動物の呼吸リズムが,脳内のどのような神経機構で作られるのかは,生理学上,最も重要な未解決の問題の1つに挙げられる.これまで多くの研究が麻酔下のネコ,ウサギあるいはラットなどを用いた,いわゆるin vivo実験系で行われ,呼吸中枢を構成するニューロンの種類,脳幹内の解剖学的位置,ニューロンネットワークなどが次第に明らかにされてきている1,2).しかし,リズム形成機構の本質についての統一された見解は存在しない.In vivo実験系のような伝統的な研究の流れに対し,呼吸中枢研究の新しい展開は,約15年前に新生ラット摘出脳幹—脊髄標本がinvitro実験系として導入されたことにより始まった3).この標本は血管系灌流を行わない外液灌流下において,長時間,呼吸中枢のリズミック活動に相当する神経活動を発生し,その出力が脳神経(IX,X,XIIなど)または頸髄前根(C4,C5など)から記録できる.この標本を用いて,われわれは呼吸運動の一次リズム形成ニューロンを延髄内に同定し,そのリズム形成の神経機構を明らかにしてきた4〜7).最近では呼吸様のリズミック神経活動を発生する延髄スライス標本8)もしばしば使用されており,in vitro標本を用いた脳幹機能の研究は今後ますます重要になると思われる9).
本総説では,特に新生ラット摘出脳幹—脊髄標本を用いて行われた研究を中心に,呼吸リズム形成機構に焦点をしぼり概説する.なお,in vivo実験の結果を中心にした,あるいは,より総合的な総説については優れた文献があるのでそちらを参照されたい1,2,10,11).
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