巻頭言
論文雑感
永井 厚志
1
1東京女子医科大学第一内科
pp.735
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901735
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医学に携わっている方は,医学に関する学術論文を書いたり読んだりする機会が多かれ少なかれあるであろう.情報過多の現代において,医学もその例にもれず数多くの論文の洪水にいささかうんざりする経験をお持ちの方も少なくないと思われる.一体,論文は何のために書かれ,読まれるのであろうか.科学の進歩と論文の数は比例するのであろうか.
業績ということがよく言われる.業績が良いとはは大概は公表した論文数が多いことを指している.そこで,多くの論文を生産する人が,業績が良いとして一定の評価が与えられる傾向である.しかし,歴史のなかで淘汰され後々まで残ることのできる論文はさほど多くはない.何故だろうか.学問の進歩には,それぞれの人達が独自に考えた仮説というものがある.その説は多くの直感にもとづいた独断であることが多い.しかし,その感じたものを証明するために調べ,実験をし,その確かさを実証しようとする.ときに,その仮説が研究過程で誤りであることに気付くこともある.その場合には,当初の仮説(思惑)を棄て新たな仮説を再構築することとなる.こうして少しでも真理に近づこうとする作業がなされる.
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