Japanese
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特集 慢性心筋炎—診断のガイドライン提示とその後の展開
ウイルスによる慢性心筋炎の作成
Virus Induced Animal Models: Chronic myocarditis
中村 浩士
1
,
山本 卓生
1
,
山村 泰世
1
,
松﨑 益德
1
Hiroshi Nakamura
1
,
Takuo Yamamoto
1
,
Yasuyo Yamamura
1
,
Masunori Matsuzaki
1
1山口大学医学部第二内科
1Department of Internal Medicine II, Yamaguchi University School of Medicine
pp.451-456
発行日 1998年5月15日
Published Date 1998/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901687
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1980年にWoodruffは,拡張型心筋症(DCM)がウイルス性心筋炎,とくにエンテロウイルス層染による心筋炎の後遺症ではないかと報告した1)が,DCMの病因を考えるうえで,ウイルス性心筋炎の進展や慢性化がDCMの発症の成因となっているか否かは今でも意見の分かれるところである.慢性心筋炎診断のガイドラインが日本循環器学会学術委員会において作成されているが(別章参照),本症は一疾患単位として国際的に認知されたものではなく,むしろ米国では否定的な意見も多い2).しかし,臨床的に慢性心筋炎からDCMへの移行が数〜十数%に認められること,本症の存在を裏付ける剖検例がいくつか報告されていること3),DCMの患者でコクサッキーB群ウイルスに対する中和抗体価が対照群より高いこと4),実際にマウスを使ったウイルス性心筋炎モデルで心筋炎が慢性化し,またその遠隔期にはDCMとよく似た病像を呈する5,6)ことなどから,ウイルス性心筋炎がDCMの発症や進展に関与していることは十分考えられる.
故にDCMの発症や進展の解明にも慢性心筋炎は重要であると同時に,その分子生物学,免疫学,遺伝学的解析にあたっても,ウイルスを用いた慢性心筋炎の動物モデルの作成はDCMの発症や進展機序解明と,さらには薬物治療の開発のためにも重要だと思われる.
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