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はじめに
心筋炎は心筋を主座として炎症が存在する状態と定義される1).本来は病理組織学的概念であり,心筋生検法の導入以前は,心筋炎を臨床的に診断することは極めて困難であった.また,病理学的にも心筋炎の診断基準が明瞭でないために,他の心疾患が心筋炎と誤診された時代があった.心臓カテーテル検査が普及する以前の1940年から1950年には原因不明の慢性心不全や陳旧性心筋梗塞に対しで慢性心筋炎という診断名が濫用された.その後,心筋疾患の概念が確立する過程で,濫用された反動として慢性心筋炎は疾患概念として一時,忘れ去られていた.1962年に,今野らが開発した心内膜心筋生検法の普及により2),拡張型心筋症や肥大型心筋症あるいは不整脈症例に慢性的な心筋炎症像を認めることが報告された3〜6).1983年にJohnらは心内膜心筋生検上の心筋炎診断基準と分類を提唱したが,一般に用いられるまでには至らなかった7).1987年に欧米の病理学者が一同に会し,心筋生検における心筋炎の病理組織診断基準,いわゆるダラス基準を発表し8).ダラス基準により,急性心筋炎と慢性心筋炎が疾患単位として明示され,現在,世界的に広く用いられている.
本邦では,厚生省特発性心筋症調査研究班が1989年に心筋生検における心筋炎の病理診断基準を9),1991年には急性心筋炎の臨床診断のてびきを発表した10).さらに,日本循環器学会学術委員会,慢性心筋炎の診断基準に関する研究(代表者:久留米大学 戸嶋裕徳教授)が中心となって,臨床所見と心筋生検および剖検の組織所見を検討した.その集積結果から1993年に慢性心筋炎のガイドラインが提示された11).慢性心筋炎はごく最近,再認識された疾患単位で,臨床的に診断される症例数が少なく,その臨床像には不明な点が多い.
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