Japanese
English
綜説
心血管系に及ぼすメラトニンの影響
Effects of Melatonin on Cardiovascular System
内田 和秀
1
,
青木 正
1
,
石塚 文平
2
Kazuhide Uchida
1
,
Tadashi Aoki
1
,
Bunpei Ishizuka
2
1聖マリアンナ医科大学麻酔学
2聖マリアンナ医科大学産婦人科学
1Department of Anesthesiology, St. Marianna University School of Medicine
2Depatment of Obstetrics and Gynecology, St. Marianna University School of Medicine
pp.1087-1090
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901587
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はじめに
血圧や心拍数の日内変動が広く知られており1),心臓死,心筋梗塞および心電図上の心筋虚血の発生頻度にも日内変動が認められている2).また,健常者における気道径の日内変動が,喘息患者でより顕著であることなど3),呼吸・循環系における日内変動は生理学的にも病理学的にも大変興味深い.これらの日内変動の他にも多くの生体リズムが認められており,それらは温度変化,明暗周期および摂食時刻などの時間的手掛かりが一切ない恒常条件下においてもほぼ24時間の周期を示す.これを概日リズム(サーカディアン・リズム)と呼び,生体内に時計に相当する機構の存在が推測された.種々の研究により,哺乳類では視交叉上核に生体時計が位置することが立証されている4).
一方,松果体ホルモンであるメラトニンの血漿濃度は日中(明期)低く,夜間(暗期)高いことが知られている4).松果体は視交叉上核より上頸神経節を介した神経投射を受けている.また,視交叉上核には,網膜より外側膝状体への経路および途中より視蓋・上丘へ分岐する経路(第一次視覚路)とは別に,網膜から視交叉上核に終る網膜視床下部路の入力がある4).これらにより,血中メラトニン濃度は視交叉上核による内因性リズムと光による調節を受けていることが確かめられている.メラトニンには鎮静作用・催眠作用・鎮痛作用・血小板凝集抑制作用・卵巣機能抑制作用・抗高コレステロール血症作用・体温低下作用などが報告されている5).他にも広範囲にわたる検討が行われつつあり,本稿では基礎的研究を中心に心血管系に及ぼすメラトニンの影響について紹介する.
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