Japanese
English
解説
神経疾患に合併する呼吸異常の病態生理と神経解剖
Respiratory Failure in Neurological Diseases:Its neuroanatomy and clinical features
安間 文彦
1
,
小長谷 正明
2
Fumihiko Yasuma
1
,
Masaaki Konagaya
2
1国立療養所鈴鹿病院内科
2国立療養所鈴鹿病神経内科
1Department of Medicine, Suzuka National Sanatorium
2Department of Neurology, Suzuka National Sanatorium
pp.1005-1010
発行日 1997年10月15日
Published Date 1997/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901572
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はじめに
神経疾患で呼吸器官の機能異常を合併すると,至適な換気量,呼吸パターンを維持できなくなる.本稿では,この病態を呼吸異常と呼ぶ.神経疾患の呼吸異常の多くでは,低酸素血症,高炭酸ガスなどの血液ガス分析の異常を来し,生体の恒常性(ホメオスタシス)は保たれなくなる.例えば急性期の重症脳卒中や頸髄損傷では,呼吸異常の治療に人工呼吸が必要となる.これらの疾患では,慢性期でも意識障害や運動障害のある患者では高率に呼吸異常が合併する.排痰障害に伴う無気肺や肺炎1),嚥下障害に伴う誤嚥や窒息2,3),上気道の機能異常に伴う閉塞型睡眠時無呼吸4)などは,神経疾患の直接死因となったり,生命予後に悪影響を及ぼす.この意味で,神経疾患に合併する様々な呼吸異常の発現機序を体系的に理解し,適切な治療を早期に開始することは,臨床上極めて重要である.
神経疾患の呼吸異常は多数の専門科が関連する分野であり,業績が蓄積されてきたのは最近になってからである.例えば,Kellyらによる「呼吸不全を引き起こす神経筋疾患の診断と治療」についての総説5),Fanburgらの編集による「神経筋疾患の呼吸異常」についての特集号6),「神経筋疾患の呼吸不全・呼吸管理の現状と将来」(日本呼吸管理学会学術シンポジウム)7)がある.
本稿では,まず呼吸調節,特に呼吸の効果器の神経解剖を総括し,次に神経疾患の呼吸異常をそれに基づいて捉えなおした.なお紙幅の都合上,各神経疾患に特異的な呼吸異常についての解説は,別の機会に譲る8,9).また,呼吸筋以外の呼吸効果器の障害,すなわち胸郭,肺,気道などの病変は,本来の呼吸器系疾患に属するため,本稿では触れない.
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