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はじめに
高齢化社会に伴い,高齢の高血圧等慢性疾患患者は増加の一途である.高齢者では,合併症の勢も多いことから複数の科・病院を受診することが多く,投与される薬剤の種類や数も多い1〜5).加齢に伴う患者一人当たりの投薬数の増加(poly pharmacy)については,70歳以上の患者における処方薬剤数は平均5.1種類と報告されている3).一方,わが国では,医学の急激な進歩に伴い多数の新薬が開発され,それらの投与方法(用法)もかなり複雑なものになっている.高齢者人口の増加に伴い,老年期痴呆の外来患者に対して薬剤を処方する機会も徐々に増えつっある.しかし,糖尿病や不整脈を発症した高齢者に対して経口血糖降下薬や抗不整脈薬などの劇薬指定の薬剤を,医師あるいは薬剤師は安全に投薬できているのであろうか.逆に,高齢の外来患者は,処方された薬剤を自分で管理し,正確に服用する能力を有するのであろうか.通常わが国では,薬の処方に薬袋が用いられているが,忙しい外来診療において,医師や薬剤師によって丁寧な服薬指導がいつも行われているとは限らない.外来患者は,薬袋に書かれた用法を自分で読んで理解し,自分で管理し服薬する能力が必要である.薬袋には統一された規格はない.視力障害者に対する配慮(薬袋に用法を大きな字で書く,もしくは点字)も一部の限られた病院のみで行われているのが実状である5).それ故,医師や薬剤師は,患者の病識や薬識を向上させることのみならず,薬を処方する場合はその事前において患者の服薬能力を理解することが必要と考えられる6).しかし,わが国には患者の服薬能力を判定する簡便な試験法はない.痴呆のスクリーニングテストとして用いられている改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)7)のごとくに,日常臨床において患者の服薬能力を評価するため簡便かつ有用な試験法の開発が望まれる.そこで,われわれは,高齢の高血圧等慢性疾患患者に対する服薬能力判定試験(Japanese regi—men adherence capacity tests;J-RACT)とそれを用いた服薬指導の指針(アルゴリズム)を作成した.
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