Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
睡眠時無呼吸症候群などの睡眠に関連した呼吸循環障害を研究する,もしくは実際に診療する医師は,睡眠に関して幅広い知識が必要である.このようなとき,1989年米国で発刊された「Prin—ciples and Practice of Sleep Medicine」というtext bookが必携の書である.このtext bookはその後の5年間に改訂が行われ,1994年第2版が出版された1).第2版では第1版に比べて新たに30章が追加されたことからも,最近の睡眠研究における著しい進歩の様子を察することができる.
1991年GuilleminaultとStoohs2)は,上気道抵抗症候群(upper airway resistance syndrome;UARS)という新しい睡眠呼吸障害,すなわち食道内圧低下に関連した覚醒反応(Pes arousal3)とも呼ばれる)が原因となる過眠症の症候群を提唱した3〜7.最近,このUARSの疾患概念を支持する研究者は徐々に増えつつある8,9).しかし,UARSについては,前記のtext bookの第1版ではまったく記載されておらず,第2版1)でも特発性中枢神経系過眠症のなかでGuilleminault自身が少し記載しているのみであり,いまだ確立された疾患とは言い難い.現状では,UARSに関して解明されなければならない病態生理上の問題点は少なからず残されている.またUARSの診断では,1)微小覚醒(micro-arousal)の評価法として睡眠ポリグラフィによるアルファ脳波覚醒(alpha EEG arousal)10)の回数を測定し,2)昼間過眠(excessive daytime sleepiness;EDS)4,11)の評価法として入眠潜時反復テスト(multiple sleeplatency test:MSLT)5,12)を行い,さらに3)上気道抵抗の評価法として胸腔内圧の代用に食道内圧(intraesophageal vpressure:Pes)測定13〜15)を行うことが必須であるが,これらの検査をルーチンに実施できる施設は限られていることも本疾患概念の普及を遅らせている一因である.
そこで,本稿では,スタンフォード大学睡眠障害クリニックなどの一部の施設で行われているUARSの診断と治療に関する現況のみについて言及する.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.