Topics Respiration & Circulation
肺の病態とNO
山口 佳寿博
1
1慶應義塾大学医学部内科
pp.97-98
発行日 1996年1月15日
Published Date 1996/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901186
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■最近の動向 肺病変と一酸化窒素(NO)との関連が初めて報告されたのは1892年のことである.当時Oslerは喘息の治療にニトロ化合物が有効であることを示した.それから約100年経過した現在,NOの動態は生体各臓器で最も注目を集めている生理活性物質の一つである.1991年より神経細胞,血管内皮細胞の構造型NO合成酵素(cNOS),マクロファージに発現する誘導型NOS(iNOS)が次々とクローニングされ,その分子生物学的構造が明らかになりつつある.肺に限ると気道上皮,肺血管内皮,非交感・非副交感神経末端にcNOSが存在し,さらには種々のサイトカインによって気道上皮,血管内皮,気道・血管平滑筋,肺胞マクロファージなどにiNOSが発現する.cNOSによって分泌されるNOは細胞内情報伝達機構として重要であるのに対してiNOS由来の過剰NO分泌は微生物殺菌作用を有し細胞傷害性に働く.現在,cNOS由来のNO分泌障害に対してNO吸入療法が,iNOS由来のNO過剰分泌に対してiNOS抑制療法が臨床的に試みられるようになっているが,NOの細胞内作用の全貌が解明されている訳ではない.本項ではNOの接着分子発現に対する分子生物学的制御作用,急性呼吸促迫症候群(ARDS)に対するNO吸入療法の新しい知見,喫煙によるNO分泌障害に関する最新の文献を紹介する.
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