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喫煙関連疾患の中でCOPD(chronic obstructive pulmonary disease;慢性閉塞性肺疾患)と肺癌は高率に合併することが報告されている1〜3).近年施行された網羅的ゲノム解析(genome-wide association study;GWAS)によって,喫煙を環境因子とするCOPDと肺癌には疾患感受性遺伝子において多くの共通路が存在することが示された4,5).即ち,“COPDは肺癌の発生母地”になるという古典的,疫学的事実が遺伝子レベルで検証されたことになる.以上の事実は,スパイロメトリーによってCOPDを診断することは将来の肺癌発生を予測することにつながり,スパイロメトリーを基礎とした呼吸機能検査は従来考えられていた以上に重要な意義を有することを意味する.しかしながら,一般喫煙者に一秒量(FEV1)を中心とする呼吸機能検査値をそのまま提示しても十分なる理解を得ることは難しい.
そこで,ある個人のFEV1が測定された時,その値をFEV1の正常基準値を与える回帰式(年齢と身長が説明変数)に代入し,年齢を“肺年齢”として逆算する方法が1985年Morrisら6)によって提唱された(Morris原法).本邦においては,日本呼吸器学会肺年齢普及推進事務局が中心となって,2008年にMorris原法の普及が図られ,現在では種々のスパイロメトリー測定機器にMorris原法に基づいた肺年齢計算式が組み込まれている7).Parkesら8)は,喫煙者に対して呼吸器機能検査値をそのまま伝えた場合と肺年齢に変換して伝えた場合を比較し,後者における禁煙率が有意に高いことを示した.さらに,肺年齢は,COPDの包括的管理ツール9),あるいは,病的肥満に起因する肺の加齢現象の評価10)などに用いられてきた.
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