主張
死ぬということ
I
pp.17
発行日 1996年1月1日
Published Date 1996/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901694
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現在地球上には,約57億の人々が住んでいると言われている.そして,毎年1億人を越える人口の増加が今後予想されており,その数が100億人を越える時は21世紀に入りそれほど遠いことではない.また,その人口の増加は地域,民族,そして経済状態ごとに遍在があり,おそらく,この人口問題はそれに付随して起こる食糧問題,あるいは自然環境問題などと共に人類が抱える最大の問題となっていくことは確実である.今後も持続して成長していく経済を前提にした社会生活は,物理的に限りある地球ではエネルギーや他の物質的資源も有限であるから,不可能ではないにしても大変困難であろう.加えて,科学の発達により人問は等身大をはるかに越えた空間の移動を行うことによって地球の相対的大きさは一層小さくなっている.
近年わが国は世界一の長寿国となったが,これは先進諸国の中でも一番低い新生児死亡率の達成といった医療の貢献によることも勿論であるが,バランスのとれた栄養の確保,衛生的生活環境の改善,義務教育の水準の向上等,生活における多くの面からの影響によることも否定できない.健康に自立した生活を送りながら長寿を全うできることは,まことに望ましいことであり,同時に,障害を持ちながらも充実し,豊かさを実感しながら生きていくことも素晴らしいことである.さて,現実は本当にそのような高齢化になっているのであろうか.
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