Japanese
English
Bedside Teaching
老人と嚥下性肺炎
Aspiration Pneumonia in Eldedy
佐藤 和彦
1
,
佐々木 英忠
1
Kazuhiko Sato
1
,
Hidetada Sasaki
1
1東北大学医学部老人科
1Department of Gerontology, Tohoku University School of Medicine
pp.965-970
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900938
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はじめに
日本人の肺炎による死亡率は約8%であり,そのうちの92%は65歳以上の老人で占められている.さらに,老人の肺炎は,いったん発症するとそのほとんどが難治性で予後不良の場合が多く,65歳以上の老人の約30%が肺炎で死亡している.一般に肺炎の感染経路としては,飛沫感染,血行感染,嚥下性感染が挙げられるが,特に老人においては,嚥下性肺炎が多く認められる.表1に嚥下性肺炎の分類を示すが,気道閉塞は食物や吐物さらに異物によるもので,治療として気管内吸引が必要となる.化学的肺炎は“Mendelson症候群”ともいわれ,pH 2.4以下の胃内容物を誤嚥して起こる肺障害である.この化学的肺炎は胃酸によるものと考えて,H2-blockerを投与し胃液のpHを下げないように試みたが無効であった.つまり,この肺障害は胃酸によるものではなく,消化酵素である胃液そのものが肺炎を起こしたといえる.次に細菌感染による嚥下性肺炎は,micro aspirationにより,知らず知らずの間に少しずつ口腔内常在菌,特に咽頭に定着しているグラム陰性桿菌,嫌気性菌などの誤嚥(不顕性誤嚥)により生じる肺炎である.
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