巻頭言
慢性心不全の薬物療法
佐藤 友英
1
1帝京大学医学部第二内科
pp.307
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900643
- 有料閲覧
- 文献概要
全身の需要を満たす十分量の血液(心拍出量)を心臓が駆出できないために生じる臨床症候群を心不全と定義している.心拍出量は心収縮性,前負荷,後負荷,心拍数の4つの因子により決定される.慢性心不全時には,多くの代償機序が作動し,これらを増大して心拍出量を維持するが,終局的には“過剰代償”となり,心不全を一段と悪化させる.この状態下では,交感神経β受容体のdown regulationや圧受容体の感受性低下も認められる.
したがって,薬物としては心収縮性を高める強心薬,Naや水の貯留をとる利尿薬や過剰代償を生じた前負荷や後負荷を軽減するいわゆる減負荷療法が行われ,とくに後負荷を軽減する薬物は心拍出量を増加するために有用である.また,すべての人にコンセンサスが得られているわけではないが,従来心不全に禁忌とされていたβ遮断薬の少量からの漸増投与が過剰代償となった心拍数を減少させることにより心筋エネルギー消費を減少し,心拡張能を改善するため拡張型心筋症をはじめとする難治性心不全に有用な可能性も指摘されている.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.