Japanese
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特集 血管内皮細胞からみた循環器疾患の新しい展開
血管内皮細胞と冠動脈スパスム
Vascular Endothelial Function in Coronary Artery Spasm
江頭 健輔
1
,
空閑 毅
1
,
友池 仁暢
2
Kensuke Egashira
1
,
Takeshi Kuga
1
,
Hitonobu Tomoike
2
1九州大学医学部心臓血管研究施設内科部門
2山形大学医学部第一内科
1Research Institute of Angiocardiology, Faculty of Medicine, Kyushu University
2Department of Internal Medicine I, Yamagata University School of Medicine
pp.1065-1074
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900568
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はじめに
異型狭心症発作が冠動脈スパスム(攣縮)に由来するという疾患概念は1970年代後半から1980年代における臨床研究によって確立した1〜4).心筋酸素消費量の増大によって虚血が生じる労作性狭心症と冠動脈スパスム性狭心症は発作の誘因だけでなく病態生理も著しく異なっている.すなわち,スパスムは心表面を走行する太い冠動脈に一過性に生じ,高度の内腔狭窄の結果,冠血流量が低下し,心筋虚血をもたらす病態である5).
冠動脈スパスムの成因は未だに不明である.冠動脈スパスムの発症機転に関する現時点の問題点は以下の三点に要約できる.第一の点は,スパスムの発生部位の形態学的特徴である.冠動脈造影上壁不整などの比較的軽度の動脈硬化性病変が認められているが,スパスムに特異的な所見はない.MacAlpinは血管壁に肥厚があると生理的範囲の血管収縮でも血管内腔は理論上,完全閉塞,あるいは亜閉塞に陥るという仮説を提唱した6).異型狭心症患者や実験モデルにこの概念を適用し内腔狭窄反応の予測値を計算し実測値と対比した臨床研究7)や実験的研究8)では,血管壁の幾何学的影響のみで冠動脈スパスムの発生を説明できなかった.すなわち,疾患群ではスパスム部の血管壁そのものに問題があると考えられる.
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