特集 器官―その新しい視点
3.循環器
血管:内皮細胞
居石 克夫
1
Katsuo Sueishi
1
1九州大学医学部病理学第一講座
pp.392-395
発行日 1996年10月15日
Published Date 1996/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901117
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ポイント 動脈硬化における血管新生
内皮細胞は血管を連続して被覆する細胞で,発生学的には間葉系細胞の分化により形成される。内皮細胞は単に血液と組織との物理的隔壁としての働きのみではなく,生体の恒常性の維持に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。さらにvascular biology(血管生物学)の進歩とともに血管内皮細胞の多様な機能についての知識のみならず,TPOをわきまえた血液・血管壁(組織)相互反応における内皮細胞による制御機構の解明が最近の医科学研究のトピックスになっている。実際に一流誌に発表された生命科学の研究論文のなかで,血管内皮細胞の機能に関する論文がここ数年1~2位を占めている。さらに,内皮細胞を中心とした血管壁構成細胞と血球細胞間の自己ならびに傍分泌機構による情報伝達機構が解明されるとともに,血管を一つの器官としてとらえる立場から総合的,横断的研究が進められているのがvascular biologyである。中でも血管内皮細胞の構造と機能を研究対象とする場合,内皮細胞学(endotheliology)と呼称する研究者もいる。
上述のように血管内皮細胞は,その解剖学的ならびに生理学的特徴1)から生命現象のすべてに関与している多機能性反応細胞といえるが,なかでも生体反応における血管内皮細胞の主な動きは,抗血栓性・止血作用,血管新生と組織修復,炎症・免疫反応の調節などに分類することができる(表1)。
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