巻頭言
疾病—量的変異と質的変異
飯村 攻
1
1札幌医科大学第二内科
pp.513
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900285
- 有料閲覧
- 文献概要
われわれが日常接する疾病には,大きく分けると,量的変異によるものと,質的変異によるそれとがある,と考える.勿論,典型例は疾病の両極に位置し,その間には連続的な分布がみられる.両極の典型例としては,量的な変異には動脈硬化症や高血圧の大部分のものが含まれようし,質的な変異には感染症や悪性腫瘍が存在しよう.しかし,これらの疾患にしてからが,量的から質的への変換やその途次のもの,あるいは質的な変化が量的なそれを伴う,などの様相がみうけられる.質的な変異は,これを見落とさない限り,相当に精度の高い診断となりうる.一方,量的な変異は,いずれの閾値をもって病的とするか,ことさら境界域では,よしんば高度の検索をなしえたとしても,判断に難渋することが少なくない.
だが,このような量的・質的に代表されるような,両極をつなぐ線上に分布するのは,単に疾病の種類,つまりは成因だけではなく,同じ疾患の内容,つまりは病態の推移にもみうけられる.実際の日常臨床では,この量的・質的変化の総合を,知らず知らずのうちに会得した,巧みな能力によって,的確な判断を下していることになる.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.