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はじめに
肺サーファクタントは肺胞II型細胞で合成され,肺胞腔へ分泌される脂質—蛋白質複合体で,肺胞被覆層を形成し,肺胞表面の空気相と液相界面の表面張力を著しく低下せしめることにより,肺胞の換気能力を維持する機能をもつ生理活性物質である1)。肺サーファクタントはきわめて特徴ある分子から構築されており,成熟動物ではその約90%は脂質,とくにジパルミトイル・ホスファチジルコリン(DPPC)とホスファチジルグリセロール(PG)が主成分である2,3)(図1)。肺以外の組織でリン脂質は膜構成分として存在し,PCは1位飽和脂肪酸(S),2位不飽和脂肪酸(U)のS-U分子種が大部分を占める。肺サーファクタントにはS-S分子種が大量に存在する4)こと,肺以外の組織では痕跡程度認めるにすぎないPGが比較的多く含まれる3,4)ことから,これら特異リン脂質の機能と生成機構が注目され多くの研究成果が蓄積されてきた3〜5)。すなわち,従来の肺サーファクタント研究の主題はDPPCおよびPGの機能と代謝調節の解析が中心であった。
最近肺サーファクタントには,サーファクタント特異蛋白質が存在し(図1),肺サーファクタントは脂質—蛋白質重量比約10:1のリポ蛋白質であることが明らかとなった2)。いくつかのアポ蛋白質のcDNAが分離され6〜10),mRNAからのアポ蛋白質の合成,細胞内プロセッシングの過程が解析されている11,12)。またアポ蛋白質の生理的役割が検討され,アポ蛋白質がサーファクタントの機能および代謝を調節する担い手であることが示され6,13,14),注目されている。血漿リポ蛋白質の代謝の調節において,各種アポ蛋白質の役割がきわめて大きいように,現在肺サーファクタントの研究はそのアポ蛋白質をめぐって,従来の肺サーファクタントの研究とは異なった方向で新たな展開をみている。
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