Japanese
English
特集 肺の微細構造と機能
肺サーファクタントの免疫生化学
Immunochemistry of pulmonary surfactant
秋野 豊明
1
,
伝法 公麿
2
Toyoaki Akino
1
,
Kimimaro Dempo
2
1札幌医科大学第一生化学教室
2札幌医科大学第二病理学教室
pp.191-199
発行日 1988年6月15日
Published Date 1988/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905124
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肺サーファクタントは肺胞Ⅱ型細胞で合成され,肺胞腔へ分泌されて肺胞被覆層を形成する。この物質は肺胞の気相—液相界面の表面張力を著しく低下せしめることにより,肺胞虚脱を防止し,呼吸を維持する機能をもつ1)。肺胞表面におけるサーファクタントの欠乏は,肺胞虚脱をもたらし,肺胞は拡張,収縮を反復する能力を失って重篤な呼吸障害を引き起こす。新生児呼吸窮迫症候群(RDS)はこのような状態,つまり肺サーファクタントの欠乏により呼吸維持が困難になった状態2),である。現在RDSをはじめ種々の呼吸器疾患における肺サーファクタントの動態解析の重要性が注目されている。
肺サーファクタントの大部分はジパルミトイル・ホスファチジルコリン,ホスファチジルグリセロールという特異リン脂質であり3),従来はこれらのリン脂質を指標としてサーファクタントの動態が検索されたためその解析には限界があった.しかしサーファクタントには少量ながら特異蛋白質が存在することが明らかとなり4),この蛋白質を指標とすることによってサーファクタントを形態学的かつ生化学的に追跡できるようになってサーファクタントの研究は大きく飛躍した。本稿では,この蛋白質(「肺サーファクタント・アポ蛋白」)について,とくにアポ蛋白抗体を用いたサーファクタントの免疫学的検索を中心に概説する。
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