巻頭言
心肺機能障害の治療に対する肺移植の役割
富田 正雄
1
1長崎大学医学部第一外科
pp.721
発行日 1990年8月15日
Published Date 1990/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900187
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高度先進医療を組み入れた治療では治療成績の評価の一つとしてquality of lifeは重要な尺度として考えられるようになった。そのため,治療体系も多様化し,治療法も疾患に対する標準治療法が確立する一方,症例に応じた細かい配慮がなされ,手術法としても標準術式に加えて縮小手術や拡大手術が症例によって適応されるようになり,治療成績の向上がはかられるようになった。また,術後もrehabilitationを活用してより高いqualityof lifeがえられる術式を優先的に選択するようになった。
このような意味からも胸部疾患に対する肺機能温存と残存予備血管床の評価は術後予後とくにquality of lifeと密接な関係を持っている。また,肺疾患があると,心とくに右心負荷をうけることになるし,逆に,心疾患があると,肺うっ血による肺病変が器質化することになる。このように心と肺の機能は互いに密接な関係があるので,一方の臓器障害があると他の臓器にも機能障害を来たすことになる。これらの臓器機能障害は,いずれもvital organ dysfunctionとして直接関連し,その機能障害の程度は術後の予後とくにquality of lifeに関連する。そのため,高度機能障害に陥った心肺疾患に対する治療に関しては,その機能保持が直接予後に関連する因子ともなる。
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