Japanese
English
特集 サーファクタント—最新の知見
肺サーファクタントの生化学—アポ蛋白の構造と機能の解析
Biochemistry of Lung Surfactant:Structure-function analysis of apoproteins
黒木 由夫
1
,
佐野 仁美
1
,
本間 敏男
1
,
小笠原 由法
1
Yoshio Kuroki
1
,
Hitomi Sano
1
,
Toshio Honma
1
,
Yoshinori Ogasawara
1
1札幌医科大学医学部生化学第一
1Department of Biochemistry I, Sapporo Medical College
pp.533-541
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901489
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はじめに
肺サーファクタントは,肺の主要機能であるガス交換を維持するために,呼吸の労作を最小限に保ち,肺胞の虚脱を防いでいる.肺サーファクタントは,リン脂質,特にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)が主成分のリポ蛋白で,特異的アポ蛋白を含んでいる.物理化学的な表面活性機能が肺サーファクタントの主要な機能であるが,肺の生体防御においても重要な役割を果たしている.血漿リポ蛋白と同様に,サーファクタント機能の発現にはアポ蛋白が必須である1).現在,4種類のアポ蛋白が知られている.親水性アポ蛋白のSP-AとSP-D,および疎水性アポ蛋白のSP-BとSP-Cである.
SP-A,SP-B,SP-Cのアポ蛋白とリン脂質は,それぞれ異なった経路で生合成され,肺胞II型細胞の特徴的な細胞内小器官であるラメラ封入体に貯蔵され,サーファクタント・リポ蛋白としてエクソサイトーシスによって肺胞腔に分泌される2).SP-DとSP-Aの一部は,ラメラ封入体を経ない経路で分泌されると考えられている.
本稿では,4種類のサーファクタント・アポ蛋白の構造と機能について概説し,筆者らの現在行っているSP-Aの構造と機能の解析を中心に紹介する.
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