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はじめに
肺サーファクタントは主に肺胞II型上皮細胞より産生分泌され,その約9%が4種類の特異蛋白質,SP-A,SP-B,SP-C,SP-Dによって構成されている(図1).肺胞被覆液に含まれる蛋白成分ではアルブミンに次いで多い.このうち,SP-AとSP-Dはコラーゲン様ドメインと糖鎖認識ドメインを同一分子内にもつ特徴からコレクチンファミリーにも属し,肺内に豊富に存在するため肺コレクチンと称されている1)(図2).本邦では,1999年にSP-AとSP-Dが間質性肺疾患の血清マーカーとして健康保険の適応検査薬となり,すでに臨床応用されている2,3).しかし,肺局所での本来の生理的機能の認識は十分とはいえない.
肺コレクチンにはウィルス,一般細菌,抗酸菌,真菌,原虫など多種の微生物と結合し,肺胞マクロファージによる微生物の貪食や殺菌能を高める働きがあることが報告されている4~7)(表1).さらに,SP-Aには,グラム陽性菌由来のmannose binding protein(MBP),グラム陰性菌由来のlipopolysaccharide(LPS),真菌(酵母)由来のzymosan,マイコプラズマ由来のlipoproteinなどに誘導される炎症性サイトカイン発現の調節因子としての作用があることが示されてきた.例えば,Borronら8)による実験では,SP-A K/Oマウスにsmooth LPSを投与した場合,BALF中のTNF-αが著明に増加するが,LPSと一緒にSP-Aを投与するとTNF-αの産生はwild typeと同程度にまでに抑制されることが示されている.
このように最近になり,肺コレクチンが病原微生物のクリアランスと肺内環境の安定化のために極めて重要な役割を担っているとの理解が深まりつつある.本稿では,特にSP-Aの貪食機能亢進作用と炎症調節作用に焦点を当て,自然免疫系における役割を当研究室のデータを踏まえて紹介する.
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