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本号の特集は「呼吸不全患者を取り巻く課題」を企画した.本特集では,冒頭,蝶名林直彦先生が「人類の課題「呼吸不全」—科学と人間からの挑戦」のタイトルで,主に呼吸不全の病態と治療法(換気療法,酸素療法,侵襲的人工換気,非侵襲的人工換気,呼吸リハビリテーション)について歴史的事項を含め詳細に執筆した.呼吸不全は急性呼吸不全と慢性呼吸不全に大別される.急性呼吸不全あるいは慢性呼吸不全の急性期に対するNPPV療法やASV療法などの非侵襲的人工換気療法および高流量鼻カニュラ酸素療法の進歩は目覚ましい.特集では,これらの治療の理論・適応症例・実際について,それぞれの執筆者が解説した.動脈血血液ガス分析値で呼吸不全を評価するが,非侵襲的な経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)測定が開発され,現在では臨床現場で広く普及している.非常に簡便であるがその活用と留意点は熟知したうえで使用したい.慢性呼吸器疾患患者に対する呼吸リハビリテーションはエビデンスの蓄積とともにその効果が認められ,さらに普及が望まれている.これには医療環境の整備も重要であるが,呼吸リハビリテーションの重要性を医療スタッフと患者が認識し,生活の一部として捉えて日常化することが肝要である.呼吸リハビリテーションを有効に行うことがQOL維持とともに社会資源の活用の面からも重要である.高齢化社会を迎え肺炎の予防と適切な治療は重要な課題である.予防には肺炎球菌ワクチン接種とともに嚥下機能の維持が重要であり包括的な対策が必要である.呼吸不全の病態解明と治療は呼吸器領域の永遠のテーマであり,「呼吸と循環」の最後の呼吸器特集にふさわしいテーマであると思う.
「呼吸と循環」は私たちの憧れの医学雑誌である.「呼吸と循環」から原稿を依頼されることが名誉であり全知全能を傾けて執筆した.大学の医局制度の改編に伴いナンバー内科から専門分野別の内科に再編された.このような状況の中でも,「呼吸と循環」は密接に関連する呼吸器領域と循環器領域が同じ医学雑誌の中で最新の情報を共有する素晴らしい舞台である.今後,呼吸と循環はそれぞれの専門分野を中心とした雑誌に衣替えする.しかし,お互いの領域の接点は常に意識し,時には共有の話題を提供するような企画を考えたい.最後に「呼吸と循環」の創刊時から編集に携わった人々と読者に感謝し,さらに新しい雑誌が「医学の発展」に寄与することを約束しあとがきに代えさせていただきます.
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